裏の裏は、表…に出せない!
実話誌等で暴走する裏系&馬鹿系ライターが、日本最大の歓楽街・歌舞伎町から発信するグダグダな非日常的体験と裏話。そして禁断の取材メモ!
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一攫千金の街
 歌舞伎町に長らく漂っていた。私は完全なる田舎者である。思い描いて上京した人生のレールだったが、何も考えずに楽な方向に進んでゆくうちに、気が付くと立っている場所は歌舞伎町だった。

 そういう意味では典型的な歌舞伎町人間だろう。なぜなら街の住人は私と同様に吹き溜まった人間たちがほとんどだからである。家出少年だった奴、夢見て頑張っている奴、手っ取り早く稼ごうとしている奴、何らかの事情を抱えてしまった奴…。自ら目指してきた奴、仕方なしに来た奴。何かを追いかける奴、何かから逃げている奴…。

 そんな人間たちに囲まれて、毎日を必死で、いや、何となく、生きているうちに、この街が本拠地となってしまった。

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 おかげで、今は街の事情や住人たちの話を書いてメシを食っているわけだから、これで良かったのか? 悪かったのか? 


 この街は突き詰めれば、男と女の世界、正と負の世界。たどり着く先は二種類。金を掴む奴と失くす奴、成功する奴と性交する奴。……ごめんなさい! ともかくヤクザであろうが、実業家であろうが、ホステス、ホスト、アングラ商売…。全ての住人の終着駅はこのどちらかである。天国か地獄か?

 そりゃ地獄より天国の方がイイに決まっている。景気のいい話の方が良さそうなので、一晩に億の金を手にした喫茶店のボーイの話をしよう。…といってもバブル時代の話ではあるのだが。



 歌舞伎町の高級クラブ街のど真ん中に某ビジネスホテルがある。ネオン街ということもあって、その利用のされ方は当然の事ながら逢引き用。ホステスと客、ホストと客 。つまり買う奴と売る奴。

 夜の街で考えられる組み合わせの殆んどが利用している。ネオン街ならではの特殊な組み合わせがほとんどだ。一般のカップルはラブホテル街に流れるために、このホテルはもっぱら歌舞伎町の住人たちの御用達である。

 ただ、一年に一度だけの大学の受験シーズンには、東京中のホテルが受験生とその家族で満杯になり、この歌舞伎町のビジネスホテルにまでも受験客が溢れる。学習環境としては日本で一番悪い場所に宿泊して受験に臨む学生。他人事ながら試験前日の追い込みが煩悩だらけの街。やっとの思いでホテルを取ったに違いないだろうが、実に同情してしまう。これも人生の乗り越えねばならない壁なのか?

 さて、ネオン街のど真ん中に位置するこのホテルに、お忍びのカップルが入るのにはかなりの勇気がいるのだが…。そこはそこ。抜け道がある。ホテルには地下・一階・二階と飲食店や美容院などがテナントとして入っており、チェックインさえしておけば、フロントを素通りして、その店の利用客に成りすますことが出来た。

 このホテル…。バブル時代はライオンで有名な不動産会社のホテルであった。沖縄のマンションにはシャレでシーサーを置いていることで有名な会社だ。歌舞伎町にもいくつかマンションがある。さっきからライオンと言っているのに隠すのも妙な話だが、歌舞伎町の住人たちにはヤクザマンションで有名なLマンションの会社である。

 この会社が都内一等地に超巨大なビルを建てた。それに伴い、無駄な資産を売却し、建設費を捻出することになった。回転率抜群の歌舞伎町のホテルが無駄だとは思えないのだが、ともかく売りに出すことにしたのであった。

 …で、どこか買ってくれる企業はないものだろうか?…と、ライオンの会社の幹部はホテルの横の喫茶店でヒソヒソ話をしていた。

 その話に聞き耳を立てていたのが、件のボーイ君であった。そのボーイ君のいる喫茶店は、実を言えばLホテルのライバルホテルの喫茶コーナーであった。その場所にはLホテルと並んでホテルが建っていたのである。

 ここからのやり取りは、あくまでも想像なのだが、ボーイ君は『その話、僕にまとめさせて頂けませんか!』と突然に切り出したのだろう。

 彼の勤める店のオーナー、つまり、軒を並べるホテルの経営者が、常日頃、従業員にぼやいていたらしいのだ。
『あのLホテルのせいでウチには客が入らない…。なんとかせにゃ!』

 彼のホテルは歌舞伎町のメインストリートである区役所通りに面したLホテルの陰に建っていた。そのせいか、まずLホテルに客が入る。Lホテルが満室になると、おコボレのように客を拾って、成り立っている状態だったに違いない。

ボーイ君はオーナーに進言した。

『ライバルのLホテルがなくなるばかりか、自分のものに出来るんです!』

そう言ったかどうかは分からないが、そういう話をオーナーに持ちかけた。

 かくして話はトントン拍子に進んだ。かつてライバル関係で、Lホテル関係者とは口も利かなかったはずの、彼のホテルのオーナーは即断したのである。それも他の買い手が現れる前に…。そりゃそうだ。Lホテルが他人の手に渡ると、一石二鳥どころでは無くなる。かえって華々しくオープンされて、自分のホテルが霞んでしまうことは間違いない。バブル期ということもあって、彼は破格の条件を切り出した。



歌舞伎町に現れると、まずその喫茶店でコーヒーを飲むのが日課だった私は、店内をキョロキョロと見渡した。

『あれ?彼、どうしたの?…あの調子のいいボーイ』

喫茶店の店長はため息混じりに私に告げた。
『あの野郎、億の金を掴んで、飛んでったよ!』


店長の話は嘘か真か? …その後、Lホテルは軒を並べて一軒のホテルになった。ホテルCとホテル・ニューCである。その後、経営者が変わったのか? かつて二軒だったホテルは、名前を変えながらも、今でもその場所に建っている。


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倉科 遼オールプロデュース ネオン街コミックス 宙(おおぞら)出版Vol.14 5月24日発売号 掲載
2006/06/01(木) 04:23:23) | 武内晃一ブログ -歌舞伎町午前零時-
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